引越し前の掃除はどの程度まで必要?退去時の原状回復とは

部屋を借りた人は引越して出て行く時に、部屋を元の状態にきれいにして返すことが義務付けられています。

賃貸契約の時に払う敷金はそれにかかる費用にあてられます。「立つ鳥、跡を濁さず」とはよくいいますが、部屋をきれいに使い、きちんと掃除しておけば敷金も返ってきますし、トラブルの回避にもなります。

引越し前の掃除のちょっとしたコツを知っておくと、お得になることがたくさんあります。

引越し前の掃除で敷金を取り戻そう

家を借りる時には、一般的に「敷金」を支払います。敷金とは、大家さんが貸している部屋を汚されたり壊されたりした場合に、部屋のクリーニングや修理を行うためのお金です。

引越し前に自分でできる限りの掃除をすることで、この敷金を取り戻すことができるかもしれません。

敷金を使う具体的な目的

敷金が使われるのは、借主の責任でついた汚れやキズを業者が部屋の清掃や補修を行う際の費用です。

・雨やこぼれた食べ物などでできたフローリングの汚れ、シミの清掃、家具や椅子を動かした時についたキズや、重量のある家具の脚でできたヘコミの補修など。

・タバコのヤニによって黄ばんだ壁紙の清掃、張り替えや、飼っていたペットによってつけられたキズや汚れ、臭いの除去など。

・通常の掃除やお手入れで取り除ける範囲の、台所の油汚れやお風呂の水アカなど。

こういった借主の責任になる汚れやキズは、ちょっと注意するだけで防げるものも少なくありません。

なるべく普段から部屋をきれいに使うことを心がけ、引越し前に自分で掃除しておけばムダに敷金を使わずに済み、納めた敷金の一部が返還される可能性があります。

敷金とハウスクリーニングの相場

引越し前の掃除で敷金が戻ってくるかどうかは、部屋の広さに応じたハウスクリーニングの料金と、支払った敷金に左右されます。

部屋の間取りが広く、大きな物件ほどハウスクリーニングの料金も高くなりますので、敷金の相場を押さえておきましょう。

敷金の相場

敷金の設定には法的な決まりがなく、貸主と不動産業者が自由に設定できますが、地域ごとに大まかな相場があります。

  • 首都圏:家賃の2カ月分
  • 東海地方:家賃の3カ月分
  • 近畿地方:大阪で家賃の6カ月分、京都で家賃の3カ月分
  • 九州地方:家賃の4カ月分

ハウスクリーニングの相場

専門業者のハウスクリーニング料金は、フローリングや水回りといった場所ごとに設定されています。引越しする時のハウスクリーニングでは、通常は部屋全体の清掃を一括で行います。

  • ワンルームタイプ:25,000円〜40,000円程度
  • 2LDK〜3LDKタイプ:85,000円〜100,000円程度
  • 4LDK〜5LDKタイプ:130,000円以上

(一戸建ての場合は1.5倍くらいの料金が相場)

敷金からハウスクリーニング料金とキズやヘコミの補修代を差し引いた金額が、借主に返還される可能性があります。逆に敷金以上に費用がかかった場合は、追加でクリーニング代を支払う必要も出てきます。

掃除のポイントとなるのは「原状回復」

引越し前に掃除をしても、もちろん部屋の壁や床が新品になるわけではありません。しかし、新品同様でなくても引越しで退去する場合には、国からガイドラインが出されている「原状回復」の状態に近づけばOKです。

原状回復とは

賃貸で部屋を使った時、普通の生活でつく汚れやキズについては「借主の責任」にはなりません。

経年劣化で説明できるレベルの汚れやキズは、大家の責任で修復するのが一般的です。借主が原因でできた汚れやキズを、あるべき状態に戻すことを「原状回復」といいます。

引越しするにあたって必要な掃除は、必ずしも専門業者が行うようなレベルで行う必要はありません。普通にするお手入れレベルで問題ありませんので、ポイントを押さえて行いましょう。

  • 室内のゴミの撤去
  • 床面や壁クロスの掃き掃除、拭き掃除
  • 台所、お風呂、トイレなど水回りの清掃(水アカ、カビなど)
  • 換気扇やガスレンジなどの油汚れの清掃

カーペットのシミ、フローリングの小さなキズなどは、ホームセンターで販売しているグッズで簡単に取れたり、補修できることが多いです。見た目で気になる部分は掃除しておきましょう。

また、長年掃除をしていないと、汚れが取れなくなってしまうこともあるので、普段からある程度の掃除はしておく方が良いでしょう。

エアコンの内部洗浄やお風呂とトイレの消毒、日焼けによる壁クロス変色の復旧などは通常の清掃範囲を超えていたり、経年劣化の範囲と認められるため、借主が行う必要性はありません。

原状回復で費用が発生しやすい事例

借主は普通の生活でできたものや経年劣化だと思っていても、原状回復が必要と判断されやすい事例がいくつかあります。

賃貸住宅に住む際には、退去するときに「え?こんなものも原状回復しなきゃいけないの?」と思わぬ出費で驚くことがないよう、借りるときから注意しましょう。

・クーラーの排水管などから水漏れしてしまって、それによる壁の汚れ、腐食の補修は、使用上の管理が不十分として、借主の責任になります。

・重い物を支えるために壁に釘などを打って大きな穴をあけてしまったために下地ボードから交換が必要な場合は、補修費用は借主負担になります。画鋲程度の小さなものは、負担をする必要はありません。

・自分で直接天井に照明をとりつけた時の跡は、借主の責任で補修が必要です。

・模様替えや引越しなどをしていて床にキズをつけてしまったなど、通常の生活ではつかないようなキズは、借主負担で原状回復の対象となります。

・家具の脚や金具がサビて、そのサビが床や壁についてしまった場合も借主の責任になることもあります。

・飼育しているペットがつけてしまった壁や柱のキズは、しつけや後始末が不十分として、借主の責任になる場合があります。

まとめ

引越しで余計な出費をしないためにも、引越し前の掃除は重要です。専門業者に依頼してまで行う必要はありませんが、自分でできる範囲の掃除はしておくべきでしょう。

また、原状回復について理解しておけば、引越しでの無用なトラブルを避けることもできます。気持ちよく引越しができるよう、事前に知識を身につけておいてください。