賃貸住宅を退去する際に多くの人がもめるのが敷金の返還です。「こんなことまで借主が払わなきゃいけないの?」ということもあれば、高圧的な物言いをされたため、理不尽だと思いながらも怖くなって言われるがままに払ってしまったという場合もあるでしょう。
中でも請求が高額になって借主も貸主も不動産業者も巻き込んで大騒動になるかもしれないのがカビと結露の話です。
部屋を借りる前に知っておきたいこと
ご存じの通り海に囲まれていて森林も降水量も多い日本は、湿度がとても高い国です。ということは、ちょっと気を抜くとカビや結露が発生するということでもあります。
日本に住んでいる以上避けられないことですが、賃貸住宅に入る際に嫌な思いをすることのないよう、いくつか知っておいてほしいことがあります。
不動産業者は常に大家の味方
まず、部屋に結露やカビが発生して借主と貸主、どちらがその修繕費用を払うべきか、となった時に間に入る不動産業者は、ほぼ100%大家の側につくと思って間違いありません。
あなたはただ短い期間部屋を借りただけの一過性の客。一方、大家は物件の仲介を任せてくれる長いパートナーです。どちらの側につくかは誰でもわかりますよね。だから、もしもめた時に不動産業者に頼ろうと考えるのは間違いです。
入ってからでは遅い
基本的に結露やカビは、部屋の断熱材が十分でないといった建物自体の構造的な問題や施工時の問題が原因の場合がほとんどです。かといって、だから借主には何の責任もないかと言えば、そういうわけではありません。
「善管注意義務」とは
借主にはその部屋が結露するとか、それが原因でカビが生えると気づいたら、自分で換気をするなどして、部屋を傷めないようにメンテナンスしなければいけません。
これを「善管注意義務」と言います。つまり、どれだけ寒くても結露防止のため、窓を少し開けておくなど、非常に暮らしにくくなることが予想されます。
びっくりする額が請求されるかも
「善管注意義務」はかなりやっかいなものです。出て行く時には不動産業者は「善管注意義務違反だから」ということでカビの生えたクロスの貼替え代金や、下のボードにまでカビが達していた場合、その取り換え費用も請求してくる可能性があります。
こうなると請求金額も数十万円単位になることも考えられるので、こちら側としても少額訴訟などで対抗するか、おとなしく払うかの選択を迫られます。どっちも嫌ですよね。そこで対策として考えられるのが、、引っ越す前にその部屋に結露やカビの可能性がないかチェックをすることです。
まずは目で痕跡をチェック
一番結露しやすいのは窓枠です。サッシとその周辺は十分に注意して観察しましょう。木の部分に黒いシミができていたり、明らかに水濡れの跡と思われるような痕跡があったり、あるいはその周辺の床材や壁が不自然に他より傷んでいたら、結露の可能性は高いです。そういう部屋は避けたほうがいいですね。
押入れには必ず顔を突っ込んでみる
部屋に押入れやクローゼットがある場合、顔を中まで突っ込んで臭いをかいでみてください。カビ臭かったらアウトです。というのも、カビ臭いと人間が感じる時にはすでに見えない場所でかなりのカビが繁殖し、多くの胞子がばらまかれていて、それがハウスクリーニングをしても落としきれないのです。
また、中には前の住人の退去後に部屋の修復をして外に生えたカビはクロスの貼替えで隠しても、押入れの中まではやっていないという場合もあるので、細かいチェックもしてください。押入れは布団など布製の物を収納することが多いため、家の中でも湿気がこもりやすい場所です。
カビはトラブルの元になるだけではなく、喘息など健康面に重大なリスクを招きかねません。できれば、というよりも絶対にカビが生えるような家に住むことは避けるべきです。
築年数をチェック
一つ目安になるのが、マンションの築年数です。結露の原因は、外気によってキンキンに冷えた窓ガラスに室内の湿気を多く含んだ温かい空気がぶつかることです。特に気密性の高いマンションは結露しやすくなります。
シックハウス症候群の問題が顕著化したため2003年に建築基準法が改正され、それ以降に建てられたマンションは24時間換気システムが設置されているはずなので、これより前に建てられた建物は避けるというのも一つの方法です。
結露とカビの予防には
上に書いたように結露やカビの原因はよっぽど汚れをそのままにしたとか閉めっぱなしでずっと留守にしていたというような事情がない限り、建物自体の構造に原因があります。
しかし、「善管注意義務」がある以上、あなたの責任はゼロにはなりません。内見でチェックしきれず、結露やカビの恐れがある部屋に入ってしまったら、できる限りの予防策をしましょう。
こまめな換気
これが一番です。それも、一箇所だけを開けるのではなく、たとえば玄関のドアとその反対側にある掃き出し窓など、風の入り口と出口を作って風が通り抜けるようにしましょう。
特にストーブやファンヒーターを冬の暖房に使っている人は、一酸化炭素中毒の危険を避けるためにもどれだけ寒くても換気はしてください。もし24時間換気システムがあれば、寒くても切ってはいけません。
こまめな掃除
頑張っても結露してしまうなら、こまめに拭き掃除をしましょう。これだけで大分違います。結露する窓の外に、いつも乾いたクロスを置いておくというのも手です。
押入れにはスノコを
湿気がこもってカビやすい押入れは、必ずスノコを使いましょう。それも、下に敷くだけでなく、壁の部分にも立てかけて布団や荷物が直接壁に触れないよう、風の通り道を確保します。そして折を見て押入れに扇風機を当てたり、除湿剤を入れてなるべく乾燥させましょう。
物の詰め込み過ぎもいけません。通気のためにも、無駄なものを買い込まないためにも、たまには全部出して掃除できるくらいの量にとどめておきましょう。
家具の配置に注意
いざ引越しで退去しようと思ったら、ずっと置いていたタンスの裏や冷蔵庫の下がカビだらけで愕然としたという人はかなり多いです。
家具の後ろは死角になるので、「なんだか部屋がカビ臭いな」と思いながらも放置していたら壁にカビがびっしり生えていた、なんていうホラーな体験をしたくないなら、家具は壁にぴったりつけず、掃除できるくらいの隙間はあけておきましょう。
できれば定期的に模様替えついでに家具の場所が動かせればベストです。
窓に新聞紙
吸湿性抜群、しかも断熱性もある新聞紙を窓にぺったりと貼って湿度を吸収してもらうという方法もないではないのですが、やはり見た目の問題があります。せめて英字新聞にしてみたら少しはましかもしれませんが、まあ気休めですね。
早めに引っ越す
ひどい場合は、窓だけではなく触ってみると壁までうっすらと湿っているほど結露する部屋もあります。こういう部屋は断熱材が適切に使われていないので、もしあなたの家がそうなら、可能であれば見切りをつけて引越したほうがいいと思います。
第一そんな部屋では冬は寒くて仕方ないでしょうし、暖房費も高額になるでしょう。
退去の際の敷金返金で大もめにもめることもあるカビや結露。一度もめるとそれこそ洒落ではありませんが、水掛け論になって精神的にものすごく疲れます。一番なのは、結露するような家には住まないこと、これしかありません。