「引越ししたら、今よりも広い家に住むから、大きな家具もラクラク置ける!」と思っていたら、とんでもないことになります。
一度でも大型家具や大型家電の搬入で苦労をした人は、「次こそはこんな失敗をしたくない」と思うものです。
いろいろと試行錯誤をくり返し、特殊作業料を払って搬入したものは、再び引越す時にも同じように特殊作業料金がかかってしまいます。大型家具の搬出入にかかる費用や、注意が必要な家財のことを知って、かしこく引越ししましょう。
家具や家電は運ぶより買ったほうがいい?
持ち家を持つまでに、あと何回引越ししますか?
特殊作業で搬入したものは、搬出でも同じ作業になりますし、今後の引越しでも搬出入に苦労する確率が高いでしょう。そのうちに、家具や家電本体の価格よりも高い料金を払って運搬することにもなりかねません。
場合によっては、転居先に運ばず、処分して荷物の量を減らし、玄関から難なく入るサイズのものに買い替えた方が安上がりになることもあります。
白物家電は最新のものほど高性能になりエコ仕様のため、電気代も安くなります。目先にとらわれず、長い目で見ることが大切です。
では、大型の家具や家電を運ぶのに、実際にどのような費用がかかるか見てみましょう。
運ぶ費用1. 引越し費用
家具や家電が多く、大きいほど、引越しの時には積載量の大きなトラックが必要になります。
トラックサイズを1トン大きくすると、作業員を増やすことになり、通常期でも2〜3万円は高くなります。繁忙期ならもっと差が出ます。
分解できない大型家具や家電、高級家具の運搬は、玄関からの移動が困難な場合、クレーン作業や手吊りなどの特殊作業料がかかります。
また、ベッドフレームや壁面収納家具など、そのままでは運べない大きな家具の分解や組み立ても、引越し時にサービスでやってもらえるのか、見積もり時に必ず確認しましょう。
分解の個数が多く複雑な工程のものなど、運搬作業に支障をきたすようなものは、別途分解組立の加工料金がかかることがあります。
運ぶ費用2. 現地での作業費用
サイズが小さいエレベーター、幅や踊り場が狭い階段、天井が低い階段、幅の狭い直角の通路などは、大型の家具や家電が運べないことがあります。
このように、どうしても玄関を通って搬入できない時には、窓から入れる方法があります。多くの引越し業者で行われる代表的な例を紹介します。
手吊り
ベランダの手すりなど、強度のある部分にロープを掛け、作業員が人力で吊り上げます。重さにより増員が必要になることもあり、料金も1万円は下らないでしょう。
特殊作業車を使うよりは安いですが、手すりの破損や壁や屋根のキズ、荷物本体の落下など、リスクも伴います。
また、ベランダや窓の形状、障害物の有無により、作業そのものができない場合もあります。
クレーン作業
クレーンで吊り上げ作業をする場合、引越し業者が所有している車両であれば少額で済むこともありますが、外注になれば小型の車両でも最低2万円はかかるでしょう。
しかも10階などの高層階の場合は、建設用の重機が必要になる上、資格保持者のオペレーターや交通誘導員などの人件費も加わり、10万円とも20〜30万円ともいわれています。
また、道路幅や建物との距離、電線の有無、地盤の固さなどにより、クレーン作業ができない場合もあります。
その場にいる作業員で搬入不可と判断した場合は、後日他のベテラン作業員が対応することになります。その家具を仮置きできなければ一旦持ち帰りとなり、保管や運搬の追加料金が発生するかもしれません。
余程の思い入れがなければ、この時点で不用品として処分してもらうことが多いようです。
運ぶ費用3. 分解組立の費用
組み立て式の家具でも再組み立てできない、壁面を覆う収納棚や飾り棚付きテレビボードなどの大きな作りのものは、あらかじめ取り扱っていない業者もあります。
また、工程が細かい複雑な作りで、ねじ止めが20箇所以上あるようなものも敬遠されがちです。前もって確認しましょう。
また、先に自分で分解したものについては、業者は作業工程が分からないので、新居への搬入時は組み立てくれないので注意しましょう。
家具や家電は、動かすごとに何かしらのダメージを受けるものです。
例えば、高さのある両扉式のロッカータンスなどは、トラックで長く揺られ続けると歪みが生じ、蝶番がずれ、左右の扉に段差ができて、開閉がスムーズにできなくなる場合もあります。
木製の食器戸棚も歪みが出て、ガラス扉の開閉が悪くなったり、引き出しの開閉が重くなったりする場合があります。
また、引越し時に家具の裏を見ると背板が湿気を吸って反りやたわみが出ているのを発見することもあります。ひどい場合はカビが生えていることもあります。
そのような家具をお金をかけて運ぶ必要があるか、愛着があり長く使いたいものか、考えてみてください。
いずれ処分するかもしれないものをトラックサイズを大きくし、特殊作業料や人件費を増やし、毎回何万円もかけて運んでいては、いずれはそのものの購入価格を上回ってしまいます。
特殊作業が不要なサイズのものを選べば、その分の出費はゼロに抑えられるので、買い替えた方がお得になるケースもあります。
今後の引越しを考えるのなら、大きな幅の家具を一つ買うよりは、幅の狭い家具を二つにした方が汎用性が高いのに加え、間取りが変わったり、搬入経路が狭かったりする場合でも安心です。
こんな家財は要注意!
玄関から入らない、階段の手すりに当たる、踊り場が狭くて回転ができない、直角の曲がり角が通せない、天井部分の梁が出っ張っているなど、引越しには思わぬところに落とし穴があるものです。
特殊作業料金の発生する事例が多いものをあげてみました。
ワイドタイプの冷蔵庫
一戸建てでキッチンを2階にしている場合など、階段上げができず、吊り作業で入れることが多い。
大きなダイニングテーブル
足の外れないものは搬入経路により難しい場合も。
ウォーターベッド
そのままでは運べないため、見積もり時に申告が必要。
介護ベッド
電動式やガス圧式の昇降タイプなど、分解が難しいものも。
ベッドマット
シングルサイズより大きいものはエレベーターのサイズを要確認。階段の踊り場で切り返しができないことも。
マッサージチェア
肘掛が大きく幅の広いものは要注意。吊り上げ作業もバランスが悪く、危険を伴う。
3人掛け以上のソファ
座面が広く、背もたれが高いものは特に要注意。
学習机
パーツに分ける際、専用の工具が必要な場合も。組立説明書と共に用意しておくこと。
ワイド本棚
奥行、高さ、幅が大きいものは階段の天井につかえる場合も。
メタルラック、スチールラック
連結して幅が広くなったものや2人組で持てないぐらい重すぎるものは要注意。
床置き式金庫
盗難対策のため、かなり重くできている。
ピアノ
高価で繊細なものなので、楽器の構造を熟知した専門業者の方が安心。
エアコン
ホースの交換など見積もり外の追加料金が発生することが多い。
分解できない大型家具
ダボが外せない、無理に分解すると木ネジが折れたり、ネジ穴が広がったりする家具。補償対象外になる。
婚礼家具
和ダンス、洋服ダンス、整理ダンスの3点セット。“お荷物”となるものの代表格。間取りにより、並べて置けなかったり、一部屋がタンス部屋になることも。
バイク
ガソリンを抜く。しっかりした固定ができないトラックでは家具と別送になる。
植木、庭木、観葉植物
水やりを控え、しっかりした養生が大事。動植物は運送拒否をする権利が業者にある。
家財は保管するか処分するか
収納が広く家賃の高い家に引越しするより安上がりなので、トランクルームを借りて季節はずれの衣類や家電を保管している人もいます。
引越し業者でも、倉庫で荷物を預るサービスを提供しているところもあります。すぐに処分するかどうか決断が下せない時は、とりあえず預かってもらうこともできます。
保管する場合
手放すのが惜しい愛着のあるもの、形見分けなどで捨てられないものなどは、引越し業者に保管してもらうこともできます。
荷物一個から預けられるところ、次の引越しもその業者を利用することを確約の上、無料で預かってくれるところ、一定期間無料で預かってくれるところなど、業者によってさまざまです。
温度や湿度管理を徹底しているところもあります。近隣のトランクルームよりは、若干安い印象です。費用対効果が見合えば利用するのも一つの方法です。
処分する場合
残念ながら、どう手を尽くしても新居に入らないものもあります。
手放すこともやむなしと思えれば、そのまま引越し業者に処分を依頼したり、不用品回収業者に引き取ってもらったり、粗大ゴミに出したり、リサイクル業者に取りに来てもらったり、ということになります。
ただし、処分の日までその場に置いておける場合に限りますし、倒れないように安全面に気をつけなければなりません。
雨ざらしだと商品価値もなくなります。この場合、引越し業者に追加料金を支払い、持ち帰って処分をお願いするのが一番手っ取り早いでしょう。
ただし、次の引越しにすぐに向かわなければいけない場合や、営業所が離れていて不用品を降ろす時間的余裕がない場合、断られることもあります。
そのまま一生住み続けられる持ち家なら良いのですが、賃貸ならば、いずれはまた引越しせざるをえません。
搬出入で二倍の特殊作業料がかかることを覚悟して使い続けたいほど、その家具や家電は愛着のあるものですか?経年劣化の心配のないものですか?
安いものを使い捨て覚悟で買うのか、いいものを長く使い続けるのか、さまざまな考えがあります。
しかし、転勤族など引越しを何度かくり返す予定があれば、高価で大きいものは不要といえます。
たとえ引越し費用を会社が全額払ってくれるにしても、玄関や階段を難なく運べる小さめのものやパーツに分かれるもの、大きくても再組み立てのできるものを選ぶようにしましょう。
どんな間取りでも、汎用性が高い家具や家電を工夫して組み合わせて使えば、新居でも快適な生活が送れるでしょう。