谷根千だけじゃない。下町暮らしはこんなに楽しい

憧れの一人暮らしを始めようという時、よく参考にされるのが「住みたい町ランキング」です。東京では恵比寿、代官山、自由が丘、関西では三宮、梅田、西宮あたりが定番でしょうか。

確かにこういう場所は「オシャレ」で「ハイソ」な空気感を感じますが、実はそんな町に負けない、いやいや、もっと住みやすいかもしれない町はあるんです。

それが昔ながらの「下町」!家賃は相当お値打ちですよ。

アーティストによる下町再発見

下町と聞いてあなたは何を想像しますか?ちょっと前なら「フーテンの寅さん」の「男はつらいよ」や「こちら葛飾区亀有公園前派出所」、大阪なら「じゃりン子チエ」あたりでしょうか。
「なんだかオシャレ感に欠ける」
「若者がいなさそう」
「治安が悪いんじゃないの?」
そんなイメージを持つ人もいるかもしれませんが、今からそのイメージをがらっと変えて「下町ってオシャレで便利!」と思わせてみせます。

セレブの町になったニューヨークの下町

マンハッタンの南側、ソーホーやノリータ、トライベッカがあるロウワーマンハッタンのあたりはかつては1800年代に建築された古い倉庫や稼働していないような古い工場ばかりが立ち並ぶ治安の悪い一帯でした。

その開発から取り残された一帯に目をつけたのが、お金のないアーティストたちでした。彼らは家賃の安い古い倉庫を自分たちでリノベーションして住居兼アトリエにしたのです。

それがオシャレということで次々にアーティストやニューヨーク大学の学生がこの地域に移り住むようになり、やがてはウォールストリートの証券マンや有名なアメリカン・バレエシアターの関係者など、いわゆるお金持ち層が続きました。

現在では高級ブティックやおいいしいレストラン、オシャレなバーが並ぶ、ニューヨーカーでも憧れる一帯です。

芸大生が火をつけた谷根千ブーム

今や東京のオシャレスポットにもなっている「谷根千」とは谷中、根津、千駄木のこと。昔ながらの木造住宅や長屋が江戸情緒を今の時代に伝えている文京区と台東区にまたがるエリアです。

実はこの地域を再生させ、現在のオシャレタウンへと変貌させるのに一役買ったのが、日本のアーティスト、東京芸術大学の学生たちです。

失われつつある路地の風景や、昔の建築様式がそのまま残っている古民家がただ失われていくのはあまりにも惜しいと考えた彼らがNPOを立ち上げ、地域の人々と協力しながら古民家の再利用や保存運動を始めたのです。

人気の下町の魅力

アーティストたちが再生させてきただけに、現在下町と言われるエリア、東京で言えば谷根千、大阪なら中崎町のあたりはすっかり有名になり、おいしいカフェやオシャレな雑貨屋が並んでいます。住んでいる人もその流れを組んでオシャレな人が多いですよ。

下町の魅力1〜商店街

今は日常の食料品などの買い物は最近はスーパーやコンビニで済ませる人が多いですが、家の近所に商店街があったらラッキーです。

レシピなどプロから教えてもらいながら買い物ができます。商店街で買い物をし続けている間に自然に食材や料理に関する知識が増えて料理上手になったという人はとても多いです。

下町の魅力2〜長屋

時々築100年近くにもなろうかという古い長屋が残っていることがあります。巨大な梁がむき出しになっていたり、ハシゴのような急階段があったり、「昔の家ってこうなってるのか!」とまるで映画のセットに住んでいるような気分になれます。

でも、実際に昔ながらの長屋に住むのはなかなかハードルの高い話です。まず、こういう建物の数は年々減っています。どうしてもメンテナンスにお金がかかることや、耐震性の問題があり、一般用に賃貸に出されるような物件は今ではほとんど巡り会えないと思った方がいいでしょう。

なぜなら、そういう風情のある古い長屋には、たいてい何十年も前からそこに住んでいる方がいらっしゃいます。その住人の方が亡くなられたり、一人で生活をすることが困難になった空き家の多くは住む人もなく取り壊されてしまうことが多いのです。

相続税の問題やメンテナンス費用をかけ続けることができないという背に腹は代えられない事情もあります。だから映画に出てくるような古い長屋は貴重品になっているため、今から探すのはなかなか難しいでしょう。

でも、古い物件ならまだたくさんあります。家賃も安いですが、エレベーターがなかったり、現在の耐震基準を満たしていない昭和の建物だったりしますので、自分のそこで暮らしたい気持ちと天秤にかけて部屋を選んでください。

下町の魅力3〜安全

「東京は人と人とのつながりが薄い」と言う人もいますが、そうではないのが下町です。毎日家にいるお年寄りが多いので、当然引越してきた若い人はどんな人間なのかじっと見られています。それはあなたの家に遊びにくる友達も同じで、どんな人が出入りしているのかもチェックされています。

人によっては「息苦しい」と感じるかもしれませんが、考えようによってはこれほど安全な町はありませんよ。下町に住む人の家に遊びに行くと、周囲の住人のじろじろと見る視線を感じるので「嫌な感じ」と言う人もいますが、それは空き巣や泥棒も同じことです。

「嫌な感じ」のする家には入りません。きちんとルールを守れる人なら、安心して一人暮らしできるはずです。

下町で暮らす注意点

下町の多くは高齢化しているため、若い人の手を必要としているところがたくさんあります。「町内会は面倒だから入りたくない」なんて言わないで、積極的に地元のお祭りや夜回りに参加しましょう。東京のど真ん中でもいまだに夜には当番制で「火の用心」をやっている町内会は結構あります。

持ちつ持たれつ

近所の人と仲良くなると自分がいない時に来た宅配便を下に住んでいたり、お店をやっていたりしていつもいる人が受け取っていてくれたりもします。また、地域の生き字引みたいな人たちも多いので、おいしい惣菜屋から信頼のおける動物病院まで、近所の情報収集にも困ることはありません。

ただし、やってもらいっぱなしはダメですよ。いつもお世話になっているのだから、力仕事の手伝いをしたり、高いところの掃除をしてあげたり、実家から何か送ってきたらおすそ分けを持っていったり、「持ちつ持たれつ」の人間関係を築かないと下町の魅力は半減してしまいます。

騒音とゴミには注意

都心で数分歩けば六本木の繁華街なんていう場所でも、昔からの住人や高齢者が多い場所では、夜は静かなものです。遊びに来た友人との何気ないおしゃべりの声も周囲に響いていないか、音楽やテレビの音が漏れていないか、注意しましょう。

また、ゴミ捨て場は町内会で持ち回りで掃除をしていたり、あるいは親切な人がいつも掃除をしてくれていたりします。

だから下町のゴミ収集場所はたいていきれいなのですが、それだけにゴミの出し方を間違えるとかなりの確率でトラブルになったり、悪気はないのに後ろ指をさされたりしますので、くれぐれもゴミ出しルールは守りましょう。

災害時には人助けを

やはり今日本で暮らしていれば日本全国どこでも地震は気になるところです。また、火事になったら消防車が入ってこれないような狭い路地だってあります。

万一の災害時にはまず自分の身を守ることが第一ですが、身の安全を確保した後に周囲のお年寄りもできるかぎり助けるつもりでいましょう。住んでいると、その期待をひしひしと感じるはずです。

一口に下町と言っても谷根千や中崎町のように観光客が来るような有名な場所から、都心にぽっかりとタイムカプセルのように残った一角まで、いろいろあります。何十年と住んでいる人も多いので、わからないことは近所の人になんでも聞いて自分から馴染もうとすれば、これほど暮らしやすい場所はありません。